2015年11月  HUMMER ESSAY 2015年12月      

2015.12.17.    石飛 毅氏

あっという間に師走ですね。
先週末、一成さんからリアスタビライザーの取り付けを頼まれたので、先日、スカイオートの新規事業であるヘリパークに植樹した『HUMMERの木』に協賛すると言う条件で請け負いました。作業は土曜日に行うため、金曜日の夕方から狭山に来て、一成さんが日頃お世話になっている職場の後輩達を誘って一成さん主催の宴会。開始時間が物凄く早かったので早々に引き上げて一成さんと入間の湯にて入浴、就寝。
翌朝、当方より早く起きた一成さんは準備万端で当方が起きるのを待っていたので、体が目覚めてから作業開始。リアのスタビライザーはサスペンションのアッパーアームを固定している4本のボルトのうち3本を利用してスタビライザーをフレームに固定するブラケットを取り付けます。運転席側のブラケットは全てのボルトにアクセスできるので、10分もあれば固定できます。ところが助手席側は燃料タンクがあるため隙間からのアクセスになるため非常に面倒です。まして、一成さんのHUMMERはNAなのでボディリフトは皆無。(ターボモデルはオリジナルで若干のボディリフトがしてあります)そのためフレームとボディの間からボルトにアクセスもできないので、燃料タンクの移動が必要です。燃料タンクはプロペラシャフトを包み込んでいるので、先ずはプロペラシャフトを外します。その後、燃料タンクを吊り下げているバンドを緩めてタンクが動くようにします。タンクを止めているベルトは2本で、リアは大きく動かすので取り外し、フロント側は甘めにします。フロントのベルトと給油口がフレームに引っかかっているのでタンクが落下する事はありません。
ブラケットを固定して、スタビライザーとコネクションロッドの取り付けで完了ですが、硬いスタビとコネクションロッドとサスペンションアームの結合は片側は簡単ですが反対側は、大抵ネジ穴が合わず、タイヤをジャッキで上げたり下げたりの工夫と、ベンチプレス100kg級の腕力が必要です。とりあえず予定より時間が掛かりましたが、お昼を少し過ぎたぐらいに完了。ただ、コレだけでは終わらないのが一成さんで、何気なくオイルの話をし始めました。それによると、先日、トランスファーからATFが洩ってたので、補充したら1L以上入ったので心配だと、暗にトランスファーのATF交換をさせる様に話を持ってきました。
トランスファーのATFを交換していると、今度は、エンジンオイルがソロソロと言い出してオイルフィルターを出してきて、ATフィルター持ってんだけど、ハブのオイルは6年間変えていないとか、デフは何時交換したか分からないとか、ブツブツと始まり、結局、全てのオイル交換?当然予定外ですから何で最初から言わないのか反論すると、『きのうのサンギョプサル美味かったねー』と後輩達にご馳走した事を言い出すという汚い手を使われてやる事になってしまいました。
そこで先ずはハブのオイル交換。ドレンアウトしたオイルの状況は綺麗でまだ賞味期限は残っていました。次はデフオイル交換。一成さんのHUMMERにはウインチが付いてて、それにアンダーガードが固定されています。一応、アンダーガードはデフのドレンボルトは避けていますが、オイルフィラーにギヤオイルディスペンサーを入れるのに邪魔です。リフトがあればまだマシしですけど、寝板でアンダーガードを避けながら油まみれのホースを繋ぐのは勘弁して欲しかったので、アンダーガードの一部をサンダーでカットしました。アンダーガードは時々曲がっているHUMMERもありますけどカットした断面を見ると思いの他肉厚で少し驚きました。リアは補助燃料タンクもないし、アンダーガードも邪魔にならず簡単にアクセスできました。デフオイルも良好で、恐らく内部の磨耗欠損はない模様。ATFも焦げ臭い匂いもなく、良好。交換したフィルターもとても綺麗でした。
一通りの作業が終わり、試走に行ってもらって帰ってくると、床にATFの水溜りを発見。当方の処理が悪かったのかと思って下回りを見ると洩れていたのはトランスファーからで、考えてみたら以前1L以上も補給が必要だった事に関しての処理は今回していないので、コレが減る原因でした。オイル洩れがするのは分かりましたが、何処から漏っているのかと確認すると、トランスファーのシフトシャフト周辺が油まみれになっていました。トランスファーの漏れは大抵この辺りで、シフトシャフトからか、分解の時に使うアクセスホールのどちらかです。ただココから洩れててもトランスファーのレベルが落ちない場合はトランスファー内にあるATFクーラーのホース緩みの場合もあります。今回はシフトシャフトからは気にならない程度の漏れで、殆どはアクセスホールからの洩れでした。
このアクセスホールは本来はゴム栓がしてありますが、トランスファーケースのこの部分は3-4mm程度の肉厚しかないため、ゴムが硬化するとATFが滲んで出てくる事がよくあります。今回の場合は、このゴム栓がなくなってたため大量のATFが漏れると言うよりも噴出してしまった様です。対策は定期的にこのゴム栓を交換すればいいのですけど、気が付く限りこのアクセスホールにネジを切って塞いでいます。ネジのサイズはその時にある部材に合わせて、テーパーの1/8またはM10にしています。テーパーネジの場合はねじ込んで終了ですが、M10の場合はボルトにナットを入れてからボルトを3回転位ねじ込んだ後、ナットの当り面にシール剤を塗布してナットを締めんで完了です。
この対策は、大井先生のトランスファーが壊れた時に、ガレージに出入りしていたHUMMERにはやっていたので、旧知の一成さんのHUMMERがやっていないとは思ってもいませんでした。一成さんからは帰宅後に確認した所、洩れはないと報告がありました。トランスファーのATF洩れはこのアクセスホールの位置が高いところにあるので、駐車中には殆ど漏れがないのでさほど気にならないのですが、走行中はフロントアウトプットベアリングの潤滑にATFが回ってくるので結構勢いよく洩れます。大井先生のトランスファーが壊れた時には見た目には漏れがそれ程酷くなかったのに、ATFが殆ど抜けてて、トランスファーケースの内側は飴色に変色してて過熱履歴が残っていました。
トランスファー内のATFが欠乏すると、最初に起きる症状は高速走行中にトランスファーのギヤ抜けがおきます。トランスファーの油温特性は一般道では殆ど上がらず、高速では温度が上がります。因みにミッションはこの逆で、街中のストップアンドゴーが多い一般道では上がって高速ではATFクーラーのお陰か余り温度が上がりません。今回はATFの補充で済みましたが、このまま補充もしないで運用して壊してしまいますと大きな出費になりますので、ゴム栓の有無を確認する事をお勧めします。

 2015年11月